許されるなら一度だけ恋を…
「つい想いを口にしてしまったけど、蒼志と恋愛したいわけじゃないから安心して。私だって家業が大事だもの。想いを出して自分をリセットしたかった。ただそれだけだから」

私は蒼志を見て微笑んだ。何でかな。想いを口に出してから、何だか蒼志の前でも素直になれてる気がする。

「まぁなんだ。桜とは恋愛は出来ないけど、一生の付き合いになるからな。これからもよろしく」

珍しく蒼志も素直に話をする。でも照れたような表情でなんか可愛く見えた。

「蒼志が素直だとなんか気持ち悪い」

「うるせぇな」

そう言いながら、蒼志は片腕で座る私を強引に引き寄せ抱きしめてきた。そして耳元で囁く。

「女扱いするのは最初で最後だからな」

「……うん」

私は引き寄せられた蒼志の腕の中で小さく呟き微笑む。不思議とこのまま時が止まってしまえばいいのに……とかいう未練がましい思いはなかった。

帰りの車の中、お互い照れ臭さからか口数が減っていた。まぁ告白のせいで気まずくなるよりはいいか。

それよりも失恋したはずなのに、蒼志と二人のこの空間にくすぐったさを感じているのは……やっぱりまだ失恋の実感がないからかな。

……失恋したんだよなぁ、私。
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