許されるなら一度だけ恋を…
「今日はもうこのまま帰れ」

私の家の近くで蒼志は車を止める。

「でも着替えないと」

「いいって。せっかくホームページ載せるんだし、しばらくはその桜色の(あわせ)着物で仕事来いよ」

私は『分かった』と言って車を降りる。そして『じゃあな』と言って車を走らせる蒼志に私は小さく手を振って見送った。

「今日は帰りが早いですね。蒼志君が車で送ってくれたんですか?」

蒼志の車が見えなくなった頃、後ろから声をかけられ、振り向くと花束を抱えた奏多さんがいた。

「はい。呉服屋のホームページ用の撮影をしに蒼志と一緒に外出して、そのまま直帰しました。奏多さんは花屋に行かれてたんですか?」

「茶室に花を生けようと思いまして」

「あの、邪魔はしませんので私も茶室に行っても良いですか?」

「構いませんよ。じゃあ行きましょうか」

私と奏多さんは家に入り、話をしながら茶室へと向かう。

「桜さんが淡い色の和服を着るなんて珍しいですね」

「蒼志に言われて撮影の為に着たんですけど……やっぱり似合わないですよね」

「今の時期にピッタリですし、何より桜さんによく似合ってますよ。とても綺麗です」

「本当ですか?ありがとうございます」

奏多さんに褒められて、私は照れながら頬を赤くさせる。社交辞令と分かっていても褒められるのは嬉しかった。
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