未来の種ーafter storyー
ただ、感染症との区別が付きにくいため、保健室で私やメグ先生が判断することは避けるようにしている。

今年に限っては、熱中症疑いの子供は全て、学園正門前にある、藤田子供クリニックに送ることにしている。

藤田子供クリニックは私の旦那様、藤田亮平(ふじたりょうへい)が院長をしているクリニックだ。亮平はこの学園の校医でもある。

「亮平がみてくれているなら大丈夫だな。
それで、優はどうしたんだ?」

優先生は坂上校長の甥にあたる。実の弟の息子さんだ。ちなみに、私の娘婿でもある。

「あー、ちょっと指を切って。結衣子先生に消毒してもらった。」

そう言って、優先生は右手人差し指を持ち上げた。

「指? 大丈夫なのか? ピアニストの大事な手なのに。」

「大袈裟だよ。紙でちょっと切っただけだから。ちゃん消毒してもらったし。」

「気をつけろよ。」

「うん。わかってる。」

「なんだか身内ばかりね。
聖くん、麦茶? 
それともアイスコーヒーにする?」

お昼過ぎのこの時間に保健室を訪れる校長先生。大抵はそのどちらかを求めての休憩だ。

「今日はアイスコーヒーかな。
優は午後の授業はないのか?」

「うん。この後はクラブ活動だけ。」

「あらそうなの? 優くんも何か飲む?」

「あ、じゃあ俺もアイスコーヒーでお願いします。」

聖くんは低脂肪乳たっぷりで、優くんはブラックね。


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