保健室で、君と最後のキス
私が叫んでいる間、八神くんはずっと隣で静かに聞いてくれていた。
その後、私が長いこと泣き続けている間も、全てを受け入れてくれるかのように黙って、ただ隣に立っていた。
────……
「ごめん、八神くん」
私が大分落ち着いた頃には、夕日は沈みかけ辺りは少し暗くなっていた。
少しの恥ずかしさを残しつつ、ここまで付き合ってくれた八神くんへの申し訳なさで私は彼に謝った。
「…ど?すっきりした?」
「…うん」
幾分私の心は整理がついたのか、前より淀んだ感情が消えていた。
今までは、保健室で声を押し殺しながら泣いていたけど、今は誰のことも気にせず、私の思っている感情をそのまま叫ぶことが出来た。
八神くんの言っていた通り、少し前向きな気持ちになれそうだった。
「じゃあ約束の通り、コレ、返すね」
八神くんは鞄から例の辞書を取り出し、私に渡してきた。
「あ…ありがとう」
私は受け取った辞書を握りながら、ふと思った。
これって、デートだったのかな…?
今日のデートを纏めれば、ただ私が海に向かって叫んでいただけ。
こんなのデートとはよべない。
変に真面目な私は、対価としてこの辞書を受け取っていいのか悩んだ。
いや、だけどそもそもこのデート自体発案したのは八神くんであって…
その時、色々な感情が私の頭を巡る中、砂浜に落ちていたあるものが目に入った。