保健室で、君と最後のキス
大事な話なのだろうか。
遠目から見える八神くんの横顔は、少し深刻そうだ。
八神くんが電話を始めて1分経った頃、どうやら話は終わったらしく、私の元へと駆け足で戻ってきた。
「莉奈、悪いんだけど、俺この後近くで予定できたから一人で帰ってもらってもいい?」
ごめん、と両手を合わせて謝る八神くん。
「それなら仕方ないよ、じゃあ先に帰ってるね」
「ごめん、駅までは送るから」
私と八神くんは来た道を戻り、その間言葉を交わさずにただ淡々と歩いた。
駅に着くと、ちょうど帰りの電車が到着しようとしていた。
「じゃあ、気をつけて」
「うん、ありがとう」
私が電車に乗り出発するまで、八神くんは最後まで見送ってくれていた。
空いている席に着き、ふぅと息を吐きながら背にもたれかかる。
今日は中々濃い1日だった…。
主に八神くんが関わっているけど。
そういえば、八神くん近くで予定があるって言ってたけど、この辺り何かあったかな?
電車の窓から見える景色は田んぼ、畑、住宅街で、特段何かあるような場所ではない。
…あ、でも確か大きな病院が一つあったような。
前に1度だけ風邪をこじらせた時に来たことがある。
県内ではかなり有名な病院だから、何かあったらここへ来る人も多いと思う。
うーん、他に何かあったかなあ。
そんなことを考えていると、ウトウトしてきた。
電車の揺れが心地よく、急激な眠気に襲われていたのだ。
「ふわぁ…」
大きな欠伸をして、眠い目を擦る。
だんだんと意識が遠のき、気がつくと私はいつの間にか眠っていた。