保健室で、君と最後のキス
学校の近くになると、私は日向に辞書を渡し自転車から降ろしてもらった。
「最後まで乗ってけばいいのに」
不思議そうに聞いてくる日向。
「大丈夫!歩きたい気分なの」
もし葵先輩に見られたら、印象が悪い。
それどころか他の生徒にだって、ふたりが付き合っていることが知れ渡っているんだから。
「そっか〜、じゃあ先行ってるね」
日向はそう言うと、手を振ってから再度出発した。
後ろ姿が小さくなるまで見送ってから、私は歩き出す。
さっき、うまくやれたかな。
わざとらしい態度してなかったかな。
あんな、思ってもないことを平然とした顔で言わなきゃいけないんだ、これからも。
大丈夫、私ならできる。
グッと強く握りこぶしを作り、前を向いた。
すると、学校の横に止まる1台の車が目に入った。
その黒いセダンのような車は、いつも登校する時間には見たことがなかった。
朝早いせいか周りにも登校する生徒が少ない。
だから余計に視界に入りやすかった。
気になって見ていると、突然後ろの席の扉が開いた。
そして、中から同じ制服を着た黒髪の男の人がひょこっと顔を出した。