秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
 彼に言われてはじめて気付いたが、確かに私の左手の薬指にプラチナの台に小さなダイヤが埋め込まれた指輪がはめられていた。
 サチュレーションに気を取られていて見落としていたよ。
 まったく見覚えのない指輪だ。
「私が眠っている間に神崎さんがはめたんじゃないですか? 私をからかうのもいい加減にしてください」
 キッと神崎さんを睨みつけて反論したら、彼は少し悲しそうな目で私を見つめた。
「やっぱり俺たちが結婚した記憶もないのか」
「だから、あなたと結婚なんかしてません!」
 語気を強めて言い張ったその時、また扉が開いて四十代くらいの男性医師と看護師が入ってきた。
「おはようございます。神崎さん」
「先生、妻はここ数カ月間の記憶がないようなんですが」
 神崎さんが症状を説明すると、医師からいろいろ質問を受けた。
「お名前はわかりますか?」
「朝倉紗和です」
 私の返答に神崎さんと兄が少し困惑した顔をする。
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