秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
私……神崎さんが言ったように記憶をなくしてるの?
 その後もう一度よく検査して、三日後に退院した。出された診断結果は、脳震盪による一時的な記憶障害。
 医師の話だと、私はここ九カ月間の記憶を失っているらしい。
 家でしばらく安静にしてくださいと医師に告げられ、頭が混乱状態のまま麻布にある神崎さんのマンションに連れて来られた。さすがにふたりきりは気まずかったので、兄にもついてきてもらった。
 三十階建ての高級タワーマンションは神崎さんがオーナーで、彼は最上階のペントハウスに住んでいる。間取りは確か5LDK。
まず三十畳ほどあるリビングに通されたが、奥に二メートルほどある大きなクリスマスツリーが飾られていて目を引いた。
 何度かお邪魔したことがあるから広いのは知っていたけれど、以前は白とライトグレーを基調としたシンプルで大人な雰囲気の部屋だったのに、今は暖炉の周りはかわいい感じでクリスマスの飾りがされ、壁にはプレゼントを入れるための靴下もぶら下がっていて家庭的なムードに変わっている。
 
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