秘密の一夜で、俺様御曹司の身ごもり妻になりました
 しかも、私好みのテイストだ。
「紗和はちょっと休んでて」
 彼にソファに座らされ、ハーッと盛大な溜め息をつく私。
 今は十二月で、私は神崎さんの奥さんで……。
 確かに外の景色を見ると木は葉っぱが散って枝だけになっているし、街行く人も厚いコートを着ていたけれど、神崎さんと結婚したという実感は全然ない。
「だってあの神崎さんよ。彼がエセ紳士というのは、小さい頃から見てきたから知ってる。それなのに結婚するって私……なにか弱味でも握られて脅されたとか? それとも泥酔して……婚姻届にサインでもした?」
 考え込む私の肩に彼がポンと手を置いてハッとした。
「思考がダダ漏れだよ、紗和。言っておくけど、俺と紗和はちゃんと愛し合って結婚したから」
 神崎さんの指摘に慌てて口に手を当てる。
 心の中で呟いたはずが、どうやら口に出して言っていたらしい。
「あの……その……すみません。私……ちょっとパニックになっちゃって」
 苦笑いしながら謝る私の横に座り、神崎さんが私にスマホを見せた。

 
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