推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)
玄関のインターフォンを押すと、中からエプロンを受けた女性が出てきた。

「はーい。ええと、ご用件は?」

 俺を見る目は明らかに怪しんでいた。当然だ。帽子とサングラスにマスク、不審者に見えない方がおかしい。

とりあえず、サングラスとマスクを外してみる。

「あの、子供の迎えを……小森です」

 子供の名前を知らないことに気が付いて、とっさにまひるの名字を名乗った。

「まあ、朝飛くんのお父さん! あさくんに、そっくりですね。本当にそっくり~」

「そう、ですか? ハハハ」

 これはもはや笑うしかない。まひるにはまだ何も確かめてないけれど、そういうことだろ……。

「ていうかお父さん、俳優のユウヒに似てますよね。言われませんか?」

 俺はとっさに下を向く。

「……いや、言われません。そんなに似てますか?」

「ああええと、目元が似てるかなと思ったんですけど……、でもすごくイケメンパパでうらやましいです~おほほほほ。すぐ呼んできますね」

 嬉しそうに戻っていく保育士の背中を見つめて俺は思う。顔パスでいいんだろうか。

でもまあ、いいか。おかげでお迎えに成功しそうだから。

「てか、やべ……緊張してきた」

 俺はそわそわしながら”朝飛“が来るのを待った。

数分後、保育士に手を引かれて朝飛がやってきた。俺はその姿に目を見張った。幼いころに瓜二つだ。毛量のある黒髪も、もの言いたげな大きな目も。

「朝飛君、パパがお迎えでよかったわね~」

 保育士にそう言われて朝飛は不思議そうに俺を見た。

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