推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)
 後部座席にまひるを乗せるといったん戻ってバッグを拾い上げ、自転車を歩道の端に寄せた。

すぐに車に戻り、運転席に乗り込むとバッグミラー越しに彼女の様子を確認する。だいぶ辛そうだが救急車を呼ぶほどではなさそうだ。

「病院、この辺だとどこが近い?」

「……その前に、行かなきゃいけないところがあって……」

「そうか、わかった。場所は?」

 まひるの言った場所をカーナビに入れると保育園のようだった。俺は何も言わずに車を走らせる。海沿いの道から市道に入り、坂道を上った先に青い屋根のかわいらしい建物が見えてきた。

「着いたぞ」

「ありがとう、ほんと助かった。ここで降りるから、雄飛は帰って……」

 いいながらもまひるは動こうとしない。おそらく動けないのが正解だろう。意地っ張りなところは代わっていないようだ。

俺は無言で車を降りた。

保育園の”お迎え”なんてしたことないけれど、行けばどうにかなるだろう。

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