推しの子を産んだらドラマのヒロインみたいに溺愛されています(…が前途多難です)
そうこうしているうちに店の外に客の姿が見えた。
「山下さんおはようございます。どうぞ~」
山下さんもコウ君とは違う船にのる漁師だ。
「おはよう。開店前に悪いね」
「いえいえ。いつもありがとうございます」
看板を出して客を迎え入れ、注文を受けた。
「おう、坊主! こっちで一緒に食べるか?」
小さく首を振る朝飛を見て山下さんは「フラれちまったな」と言って豪快に笑った。
彼に限らず店の常連客のほとんどが朝飛のことを気にかけてくれる。孫のようだといいながら面倒をみてくれるひともいる。
そうでなければひとりで店を切り盛りすることはできないだろう。
忙しい時は食器を下げてくれたり、洗い物までしてくれる。そんな客のために私は腕を振るうのだ。
店を持つ前、私は栄養士として大きな企業の社員食堂で働いていた。
短大生時代から飲食のアルバイトをしていたくらい接客も料理も大好きだったけれど、こんな形で店を持つのは想定外だった。