政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 専務が覗くなんてありえないとは思うけど、でも、でも。

「そんなに気になるか?」

「い、いえ。ですが宗方さんにはなんと報告すれば……」

 緊急事態とはいえ、男女がふたりきりで部屋を共にするのは、コンプライアンス的にやはりまずいのではと思う。

「寝室が別れているから問題ないさ。俺から宗方には言っておく」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 冷静に言われると、確かにそうだと思えてくるから不思議だ。

「食事の前に風呂に入るか。お先にどうぞ」

「い、いえ、いえ。専務、お先にどうぞ」

 そうか悪いなと言って、さっさと上着を脱ぎ始め脱衣所にに入る専務は、本当に何も気にしていないらしい。

 私が寝室にいる間に、ザバッと湯を浴びる音や、チャプーンという湯船につかる音が聞こえてくる。

「やっぱりありえないですよ専務」と、小さくつぶやいた。

 雪に濡れたときを想定して下着も着替えも持ってきている。お風呂に入らない選択もあるけれど、雪に濡れた髪は洗いたいし、不潔だと思われるのも嫌だし、温泉に浸かりたい。
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