政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
その日は朝から底冷えする寒さだった。
手を擦り合わせながら給湯室に行くと、スマートホンを手にした梨花さんが振り返る。
「今日もまだかしらね」
数日前、おかしな発表があった。
セキュリティ強化のため社内のパソコンは三日から五日間、インターネットから遮断しますという通達があったのである。こんなことは初めてだ。
「専務は何か言ってる?」
「いいえ、特には何も」
具体的にはなにも言われていないけれど、ここ数日、須王専務や宗方さんが情報システム課に入り浸りであることをみても、重大な何かが起きているのは間違いないと思う。
「ネットが使えないと不便で仕方ないわ」
「ほんと、そうですね」
梨花さんとの他愛もない話を終えて給湯室から出ると、笑みを浮かべていたはず頬からスッと力が抜けた。
(加郷と関係あるのかな)
突然加郷が『辞めるのは今日になった』とメッセージを送って来た。その日を境に、須王専務と情報システム課が慌ただしくなったのである。