政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~
 所有していたアパートやビル、それにマンションを手放すことになり、それでも足りず一千万の借金まであるという。

『こっちの大学なら働きながら通えるだろ。だからさ、俺このまま日本でがんばるよ。紗空には絶対に言うなって言われていたんだけど。ごめんな、心配かけて』

「何言ってるの! 教えてくれてありがとう。でも葵生、結論を出すのはまだ早いわ、私も色々考えてみるから」

 それから少し世間話をして、電話を切った。

 急いで通帳を開いて見たけれど、残高は五〇万しかない。家賃がかからない上に夜遊びもしないのでもう少し貯金があったはずだけれど、秘書になって結構な額の衣料品を買ってしまったからだと悔やんだ。

 とはいえそのお金があったとしても焼け石に水。一千万には遠い。

「……そんな」

 青扇学園と寮生活での何不自由ない暮らし、自分にかけてもらったお金を考えれば、弟の留学費用などささやかものだ。

 そう思うにつけ、弟には何としても留学させてあげたかった。

(せめてその借金さえ返せれば)
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