王子と姫の狂おしい愛
「………」
「椿姫?」
あまりにも怖すぎて、まだしがみついている椿姫。
琥珀は椿姫の背中をゆっくり撫でた。

「ありがと…もう、大丈夫よ…」
「うん…よかった。あんなとこにいるの見て、心臓潰れるかと思った……」
「琥珀…」
「ん?」
「私のこと、好き?」
「もちろん!」
「だったら、連れ去って!私のこと……」
「え━━━?」
バッと椿姫を見た、琥珀。
あまりの衝撃に言葉がでない。

「お母様に……婚約、解消しなさいって言われたの。
そんなの……耐えられない…!」
「は?解消……?」
「このままじゃあ…一生許してもらえない。
だったら、連れ去ってほしい。
私は…琥珀がいれば、何もいらない」
椿姫がまっすぐ琥珀を見上げて、言った。

「俺だって…連れ去りたい…!今すぐ連れ去って家の中に閉じ込めて、誰にも触れさせないようにしたい……
でも…それは無理だよ……!
椿姫だって、わかるでしょ?
あのババァ…いや、彩姫子オバは絶対的な権力があるだろ?
すぐに連れ戻されるよ?
そうなったら、それこそ一生会えなくなる。
そんなことになったら、俺の方が壊れて狂ってしまう。
俺にもっと力があったら、こんな思いしなくて済んだのに……ごめんね…
やっぱり…琥珀坊ちゃまだね。俺……」
「それは違う!
違うの!ごめんなさい……琥珀を困らせたいんじゃなくて、ただ…傍にいたいだけなの。
ほんとにそれだけなの……」

「椿姫、今は俺達はできることを誠実にこなすだけだよ。大丈夫。俺や椿姫の親父が、味方だから!」
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