幸せとはこの事か
たまに、こういう夜がある。
紅幸くんが夜10時過ぎ訪問しに来る。
大体は、蒼星が早く寝る日か、お父さんに会ってしまった日。
ポッケに入れていたスマホが震える。
内容は、姐百音からだった。
姐百音『お風呂、上がった』
おきな『気持ちよかった?』
姐百音『うん、おきなは?もう入った?』
おきな『入ったよ、気持ちよかった。体育の疲れ取れた』
姐百音『あれだけ爆睡してたのによく言うよ笑』
おきな『あれは体力の回復だから、お風呂とは関係ないよ笑』
姐百音『はいはい、あ、ごめん。父さんと母さんに呼ばれてる。多分時間かかる気がするから少しの間連絡途切れる。ごめんね』
おきな『気にしないでいっておいで、大学応援してもらえるといいね』
姐百音『ありがとう』
そこでLINEが途切れる。
そうしてるとお父さんの服に身を包んで髪の毛がペチャンコになっている紅幸くんが背後からハグしてくる。
おきな「どうしたの?」
紅幸「ごめん、急に来て」
おきな「それ絶対お風呂入る前に言う言葉だよ」
紅幸「それはたしかに。会いたかった」
おきな「…私も実は待ってた」
紅幸「その言葉期待しちゃうからあんま言ったらだめだ」
おきな「期待していいよ」
紅幸「悪いやつだな」
おきな「そっちもね」
紅幸くんは一旦手を解き隣に腰掛けるかと思ったら私を持ち上げて自分の太ももに乗せて後ろから抱き抱えてくる。
おきな「同じ匂いするね」
紅幸「この匂い俺好きだよ」
おきな「ありがとう」
ぎゅーと抱きしめられる。
紅幸「父さん、やつれてた」
今にも震えそうな声で紅幸くんは言う。
紅幸「前に見たよりもやつれてた。でも、そのやつれてるのを取れるのは俺じゃない…」
おきな「そんなことないよ」
紅幸「最低限の暮らしは出来てるとはいえ、父さんは俺の事を見てくれなくなった。でも…あの人には…」
そういう紅幸くんの抱きしめが強くなる。
おきな「…私は見てるよ。紅幸くんのこと」
紅幸「…うん」
おきな「大丈夫だよ…私も一緒だから」
紅幸「…今日、いていい?」
おきな「学校は?」
紅幸「朝帰る。」
おきな「…いいよ。そばにいてほしい」
紅幸「…うん」
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