桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「やっぱりあの日の事は、きちんと匡介さんに問い詰めるべきなのかしら」
「奥様……」
分かってる、寧々だってこんなことを聞かれても困るはずだ。だけど私には彼女以外にこんなことを相談できる相手もいない。両親に話せば浮気と勘違いされて実家に帰るように言われかねないし……
それにあの日以外、匡介さんは私を不安にさせるようなことはしなかった。
「不安を感じないわけじゃない。だけど話してくれなくても信じてみようと思うの、自分の夫の事を」
「……ずいぶん強くなられましたね、杏凛お嬢様は。昔はお転婆のわりに、物凄く泣き虫でしたのに」
意地悪い言い方をするわりに、寧々の表情はとても柔らかで嬉しそうに見えた。確かに私は活発だけどよく泣く子供だった、その頃を思い出しているんでしょう。
「……そういえば、匡介さんも私のことを泣き虫な子供だと思ってたのかしらね?」
私と匡介さんでは少し年が離れてる、彼はあの頃どんな思いで私のことを見ていたのだろう?
「ああ。うるさくて泣き顔の不細工な子供、とかでしょうかね?」
「それ、ちょっと酷すぎない? 匡介さんは子供相手だってそんな事は思ったりしないはずよ?」
本気でないのは分かっているが、寧々の揶揄うような言い方に少しだけカチンとくる。だって匡介さんは本当はすごく優しい人だから……
「ふふふ、そんな風にムキになっちゃうんですね。大事な旦那様を悪く言われて腹が立ったんでしょう?」
「大事なって……もう、私で遊ばないでよ」
寧々は私にとって匡介さんがどんな存在なのかを試したんだわ。そして私も自分の中で彼が大きい存在になっている事に気付いてしまった。
でもこの話はここでおしまいにして、寧々と食事の準備に取り掛かった。