桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「奥様は聞いていらっしゃらないのですか? 私も早く来て欲しいと言われただけで、その理由までは……」
私と寧々は顔を見合わせる。つまり匡介さんは私や寧々にきちんとした説明もなく、昨日の夜遅くにはこの家を出たということなの? 契約妻との初めての夜など、彼にとってはどうでもいいのでしょう。
「そうね、いちいちお飾りの妻にそんな事を報告する必要はないわよね」
そうやって自分の立場をしっかりと弁えていなければいけない、変に期待すれば自分が辛い思いをするだけだから。
「奥様、旦那様はただ言葉が足りないだけです。決して杏凛様をないがしろにしている訳ではないのですよ?」
「ええ……私がもう少し彼の役に立つ妻なら、そう思えるのかもしれないのだけど」
どうしてこう卑屈な考え方をしてしまうのだろう、いつも人の意見を素直に受け取ることが出来ず意地を張る。こんな性格だから身内にも強情で可愛くないと言われているのに。
「そう思うのならば、旦那様の役に立ちたいと伝えればいいのです。ところでお薬はちゃんと飲まれました? 朝食が手つかずのようですけど」
寧々はあっさりとそう言って、私をソファーから立ち上がらせてテーブルへと移動させる。そうして私が朝食を食べ終わるまで、話し相手になってくれた。私の不安が少しでも紛れるように、彼女はそうしてくれている。
「……簡単に言うんだから、寧々は」
「考えすぎて動けなくなる杏凛様は、これくらいでいいんですよー」
なんて、本当にそう出来ればこんなに悩まなくて済むのでしょうけれど。