桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜


 匡介(きょうすけ)さんはそんなに簡単に言うけれど、私はそんな気楽に考えることは出来ない。仕事を頑張っているのは匡介さんで、私は彼の用意してくれた家でのんびりしているだけ。
 せめて何かの役に立てていれば、少しくらいの我儘は許されるのかもしれないけれど。

杏凛(あんり)は難しく考えすぎだ。君がもっと使いたいというのならば、俺が仕事を増やせばいいことなんだぞ」

「冗談はやめて? 私は匡介さんにそんな事望んでませんから」

 彼が言うと本気なのか、そうでないのかの区別もつかない。鏡谷(かがみや)コンツェルンの次期社長でもある彼の仕事量は少なくはないはず、それなのに匡介さんはこんな事を当たり前のように口にしてくる。
 私が匡介さんにして欲しいのはそんな事じゃないのに、この心の中は少しも彼には伝わらない。

「やはり君は優しいな……」

 しみじみとそんな事を言う匡介さんは、どこかズレてるのではないかと思ってしまう。両親からはずっと、仕事もバリバリできる有能な人だと聞いていたのだけど。

「私は優しくなんて……」

「優しいさ、杏凛は。子供の頃からずっと」

 ふっと彼の口角が僅かに上がった事に気付く。それだけで強面の彼がずっと柔らかな雰囲気になるにだと知った。
 ……いま、彼は何を想像して微笑んだの? もしかして小さい頃の私だったり、なんて考えて首を振る。
 そんなはずはない、私はずっと匡介さんに睨まれていたのだから。


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