桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「夫にちゃんと言っておきます、ごめんなさい」
「冗談ですよ! ちょっと羨ましいんで妬んで言ってるだけです。俺はまだそんな相手がいないんで」
ぺこぺこと頭を下げる私に飛島君はそう言って笑ってくれるけれど、恥ずかしすぎて今すぐ家に帰りたい気分だった。
私にはそんな素振りは見せもしないで、知らないところで本当の気持ちを他の人に話している。そんな匡介さんにちょっとだけ腹も立って……
「怒らないで下さいね、鏡谷部長は杏凛さんを誰より大切に思ってる。それだけ伝えておきたかったので。ほら、この部屋です。俺はこれで失礼しますね」
医務室と小さなプレートが付いている部屋に案内すると、飛島君はあっという間にまたエレベータのある方向へと走って行ってしまった。
一方的に話されたのに全然嫌じゃなかった、見えなくなった彼に頭を下げて扉を開いた。
「匡介さん……?」
白いカーテンがヒラヒラと風に揺れている、一番奥のベッドで匡介さんは眠っているようだった。静かに近づいて彼の寝顔をじっと観察する。
そう言えば私が彼の寝顔を見るのは初めてかもしれない……
顔色は悪く眼の下の隈も酷い、それに少し痩せたんじゃないのかと思った。離れたのはほんの少しの時間のはずなのに、随分会えなかったような気持ちになる。