桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「ねえ、どうしてそんなに何でも一人で抱え込んじゃうんですか? こんな風になるまで……」
サラリ、そっと触れた彼の髪は思っていたよりも柔らかい。そのまま指を動かせば短い匡介さんの髪はサラサラと指の隙間から零れ落ちていく。
こんな時、私の方が匡介さんを抱きしめてあげられたら良かったのに。
彼との結婚生活の中で少しずつ育った私の中の特別な感情は、もうはっきりと形を成している。
……ただ、私が気持ちを伝えることで匡介さんに迷惑が掛かってしまうのが怖かった。契約を終えて自由になれるはずの彼を、私の我儘で繋ぎ止めていいのかも分からなくて。
それでも一緒に居てこんなに膨らんだ想いを無かったことになんてもう出来そうもない。伝えたい、想い合いたい。私がそう思えるのは他の誰でもなく匡介さんただ一人だけなんだから。
「私はそんなに頼りないですか、匡介さん」
髪に触れていた手を彼の頬へと移動させる、窓が開いて風が入ってくるせいか匡介さんの肌は冷えていた。体温を分けるようにゆっくり手のひらで彼の頬を包んで、そして願った。
……どうか、この人と気持ちが通じ合えますように。本当の夫婦になれますように、と。
「……あ、杏凛?」
「匡介さん、気がつきましたか!」