桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「……分からないように言わなければ、君は逃げるだろうからな」
「なんですか、それ」
私に話す気が無いのなら中途半端に教えなければいいのに。それとも匡介さんは心のどこかでその事を私に知って欲しい気持ちがあったりするのかしら?
その無表情からは相変わらず匡介さんの気持ちをうかがい知ることは出来なくて。
「もうその話は良い、鵜方先生が来るまで少し身体を休めていてくれ」
自分の都合が悪くなると、そうやって誤魔化すのかと言いたかったけれど止めておくことにする。この人がこれ以上言わないと決めたことは、私が何度訪ねてもきっと教えてはくれない。
昨日の夜に彼が何をしていたのかを話してくれなかったように……
「そうですね、無理に話してくれなくてもいいです。所詮、私は契約妻にすぎませんから」
「杏凛、俺は……」
自分の立場を再確認するように「契約妻」と言葉にすれば、匡介さんの口元が僅かに歪んだ。そんな彼の言葉の続きを聞くのが怖くて、匡介さんの言葉を遮るように……
「すみません、変な事ばかり言って。やっぱり疲れてるのかも、少し休みますね」
もう一度彼に背を向けるようにしてベッドに潜り込むと、匡介さんが小さく息を吐く音が聞こえて。
「きちんと話しておくべきだった、聞いてくれないか杏凛。昨日の夜、俺は————」