桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「さて……杏凛はもう大丈夫みたいだし、僕はそろそろ別の患者さんの所に向かわないと。とりあえず今日はこのホテルでゆっくり身体を休める事、分かったね?」
「……はい、ありがとうございます」
私の返事を確認すると鵜方先生はスタスタと部屋の入り口に向かって歩き出した。そんな彼の後を匡介さんが無言でついて行き、二人で部屋の外へと出て行ってしまった。
すぐに戻って来るかと思ったのに、出て行った匡介さんはなかなか帰ってこない。二人でいったい何の話をしているのか、気にならない訳じゃない。けれどこうして私に隠れてコソコソと話すような事なら、きっと知らない方がいいはず。
「こんなお荷物な妻だもの、愚痴の一つや二つ言いたくもなるでしょうよ」
こうやって諦めるように何度も言い聞かせて、期待なんかしないようにと繰り返してるのに。それなのに匡介さんのちょっとした優しさに心は何度もグラついてしまってる気がする。
たとえ建前上の妻でもそれなりに大切にしなければ、真面目な匡介さんならばそう考えているのかもしれない。
……ええ、きっとそうよ。
「義務で優しくするなんて、本当に匡介さんらしい」
自嘲気味に呟いて、そのままベッドに潜り込もうとすると……
「どうして俺が義務で、妻の君に優しくしなければならないんだ?」