桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「そんな事はないです……あの、すみません」
そんな事あるわけがない、匡介さんはただの契約妻でしかない私を気遣いこうして二人の時間まで作ってくれたりもする。仕事でもプライベートでもしっかりしているこの人を、素直に頼れないでいるのは私の方で……
申し訳ないと思った、私がこんな可愛げのない妻だから匡介さんをこんな気持ちにさせてしまっている。それでも思わず出てくる言葉は謝罪ばかりだ。
「どうして謝る? 杏凛は俺が望んでいないのにそうやってすぐに謝ってしまう」
決して責めるような言い方じゃない、匡介さんが静かに私を怖がらせないよう気を使ってくれているのが分かる。この手のひらだって宝物にでも触れるように本当に優しくて温かいのだもの。
「悩んでいる事があるなら話してほしいし、俺が力になれる事があるなら相談してくれないか? こうして杏凛が一人で苦しんでいるのを見ているために俺は君と結婚したわけじゃない」
匡介さんはそのまっすぐな視線を決して逸らしたりはしない。この言葉には嘘は無い、自分を信じろと言うように。
私は匡介さんと結婚して心の奥に処理しきれないでいるわだかまりを、今も両親にもこの人にも話せないままでいた。それをこの場できちんと伝えた方がいいというの?
……まだ、そこまでの勇気は私にはない、もし呆れられたら嫌われたらという気持ちの方が大きくて。