桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「先に飲み物をとってくる、杏凛はここで少し体を休めていなさい」
匡介さんは私をテーブル席の奥の椅子に座らせると、さっさと一人で行ってしまった。きょろりと周りを見ると、そこには色んな種類の本が並べられている。
どうやらここはブックカフェのようで、一度訪れてみたいと考えていたのが思わぬ形で叶ったのかもしれない。
流れるのは流行りの音楽ではなく落ち着いたクラシック、隠れ家のようなこの店の雰囲気に先ほどまでの胸の苦しさが少しずつ解れていくようだった。
きっと匡介さんにもいらぬ心配をかけてしまったはず、過保護だと文句ばかり言っておきながら結局迷惑かけている。
こんな面倒な妻なのだ、いつ匡介さんに見放されてもおかしくはない。その覚悟をして彼の手を取ったのに、今はこんなに不安になってる。
せっかく落ち着いたはずの心がまたざわついてくる、堪らなくなって俯き手で顔を隠したその時……
「杏凛……」
長い髪をサラリと掬うように梳いて、大きな手のひらが私の頬に触れる。低く優しいその声が私の耳の中で木霊するような気すらした。
「匡介さん……」
そっと顔を上げれば、匡介さんは私の顔をじっと見つめその手で私を確かめるように触れる。少し冷えた頬も額も……血色の悪い唇も。
「杏凛、俺は君の夫としてまだ頼りないか?」
「……え?」