彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

(…20年前に私、殺されそうになりましたので。…ずっと怖くて、怯えていたのです。…でも、樹里の事は夢に出て来ていました)
「殺されそうになったって、もしかしてその相手は…大紀か? 」

 シーンと静かになってしまったジュリーヌに、優は大紀に間違いないと確信した。

「…大紀は、私の事も殺そうとしていたんだ。君がいなくなった晩、大紀は私の首を絞めようとしていた。私が目を覚まして途中で止めだがな」
(そんな事が…)

「ジュリーヌ、会う事はできるか? 」
(はい…でも、人目を避けたいのです。リッチ―ルヒルズに来て頂けますか? )

「判った。では、明日の昼間でもいいか? 」
(はい。ではまた、連絡しますので)

「ああ、分かった」

 電話を切った優はギュッと電話を握りしめ、安堵の笑みを浮かべていた。

「良かった無事で…」

 心なしか優の表情は穏やかになっていた。




 仕事を終えて、優は19時を回る頃。
 電話をかけた相手の下へやって来た。

 その相手とは…。

「ようこそ来てくれましたね、お待ちしておりました」

 ニコッと笑う宇宙。
 そう、優は宗田家へとやって来たのだ。


「ちょうど良かったです。今夜は、柊も樹里ちゃんもいないのでゆっくりお話ができます」
「すみません、突然お邪魔して」

 リビングに通された優。

「どうそ、おかけ下さい」

 ソファーに案内され腰を下ろして座った優は、ふと、テレビの横にある写真建てに気づいてじっと見た。

 写真たてには小学生の頃の柊が写っている。
 その写真は柊がサッカーをやっていて、サッカーボールを手ににっこり笑っている写真である。
 無邪気に笑う柊は何の屈託もない素直な表情で、ちょっと堀の深い目鼻立ちをしている感じがする。
 
 その写真を見た優は、なんとなく自分に似ているような感じを受けた。

 気にせいだろうか? でも、私も学生時代にはサッカー部に所属していたが…。
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