彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
言われて思い出してみると、ジュリーヌはいつも優しい笑顔で包んでくれていた。
言葉がとても丁寧で、話していても安心できて。
怒られたことは一度もなかった。
叱る時も優しい口調だから、怒られたという感覚がなく自分が悪い事をしたと自覚するだけだった。
そんなジュリーヌといると…正直嬉しくて、この人がお母さんでよかったと思っていた。
だが。
ジュリーヌがお風呂の入っている時に、結婚指輪が外されていて、その裏を見た時に結婚した日付がい分が産まれた後であった事を見て職を受けた。
そのショックから、ジュリーヌが子供ができたと聞かされて。
もしかしていつか自分は捨てられてしまうのではないかと、不安を感じるようになった。
だから…。
ジュリーヌが臨月を迎えた時。
一緒に買い物に行った時に、歩道橋からジュリーヌを突き落として大紀は逃げ帰って来た。
いなくなったと言って嘘をついていた大紀。
暫く行くへ不明だったジュリーヌがみつかり、子どおがいなくなってしまったと聞かされると大紀はホッとしていた。
しかし安心するのも束の間。
優が養女を迎えた事から、また捨てられるのではないかと不安に襲われるようになった。
その不安がだんだん怒りに変わって、ジュリーヌに反抗するようになり樹里にも意地悪をするようになっていった…。
あの旅行の時も。
怒りが爆発して、ジュリーヌを呼び出した。
追いかけて来たジュリーヌを突き落として、そのまま逃げて来た大紀。
全部、不安から怒りに変わってやった事だった。
ジュリーヌの事が嫌いなのか?
そう聞かれると…嫌いではないと思った大紀。
「別に…嫌いだとは思わないけど…」
「けど? 」
「俺は…きっと嫌われていると思う…」
「そうか。お前はジュリーヌに嫌われていると、そう思ているのだな? 」
「ああ。…だって俺、嫌われても仕方ない事をしたから…」
ムスっとして俯いてしまった大紀は、拗ねている子供のような顔をしている。
来た時は真っ向から向かってくるような目つきをしていたが、お風呂に入り食事をすると落ち着いた表情に変わって来た。
我が家に帰って来た事から素直になって来たのだろう。
優はそう思った。