彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
言われた通り先にお風呂に入る事にした大紀。
久しぶりの我が家のお風呂。
まるで温泉のように広く、浴槽はヒノキで作られていてとてもいい香りが漂っている。
洗い場の椅子の腰かけて、シャワーを出して頭から順番に洗い始めた大紀。
心地よいシャワーの温度と水圧。
使うシャンプーも香りが良く、ボディーソープも柔らかい泡立ちで使い心地が良い。
一通り洗い終えて大紀は湯船に浸かった。
一番風呂に入れてくれるなんて初めてかもしれない。
いつも、父さんが一番で俺は二番目だった。
風呂の順番なんてどうでもいいけど…俺の家って、こんなに居心地よかったのか?
ゆっくり湯船に浸かって脱衣所に出てくると着替えが用意してあった。
真新しい下着とグレーのシンプルなスェット。
タオルもフワフワで心地よかった。
大紀がお風呂から上がって来ると夕食が用意されていた。
今日の夕食は和食で、鮭の焼き魚にジャガイモに煮物に大根と昆布の煮物があった。
暖かい白ご飯と具沢山のお味噌汁。
特別贅沢ではないけど、なんとなく大紀には懐かしく贅沢な食事に感じた。
特に会話を交わす事なく優と大紀は食事を食べ始めた。
大紀は久しぶりにまともな食事をとった気がした。
ずっとあちこちの女性を引っかけては泊らせてもらっていたが、みんな夜の女で昼間は寝ていてろくな食事を作ろうとしないでコンビニ弁当や総菜を買ってくるばかりだった。
こんなに手の込んだ手作り料理を食べるのは、どのくらいぶりだろうか…。
柊を刺してからは、逃げるようにネットカフェに言って過ごしていたが、その途中に有希に会ったのだった。
だが有希といると居心地が悪く抜け出してきたのだ。
「あのさ…」
大紀がボソッと言った。
「どうした? 」
「いや…。俺が、ジュリーヌさんの事を気にったって話し…本当かな? って思って…」
「お前はどう思う? 」
「どう思うって…」
「一緒にいてどうだったのか。それを思い出してほしいのだが」
どうだったか…。