冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「本当にありがとうございました。後日お礼に伺いま……」
「礼はいい。それより、こっちに来い。おまえが寝ている間に適当に作ったから食べていけ」

寝室のドアから出て行く後ろ姿を追いながら「あの、そこまで面倒をかけるわけにはいかないので」と言ったのだけれど、それに対しては何も返事がなかった。

目の前にリビングダイニングが広がり、ここは本当に私の部屋の隣なのかと疑問に思う。

たしかに角部屋は間取りも家賃も違うというような話は聞いた気がするけれど、まさかここまで違うとは思っていなかったので、その広さには驚かずにはいられなかった。

対面式キッチンの向かいには木製のダイニングテーブルと、黒のレザー生地の椅子が二脚置いてあり、リビング部分には三人は余裕で座れそうなソファがある。

絶対に映画鑑賞が趣味に違いないと思うほど大きな液晶テレビが壁にかかっていて、私の部屋にはそんな金具も配線設備もなかったので、こんなところまで違うのか……とぼんやり眺めた。

岩倉さんの部屋は広く、とてもシンプルだった。

いいな、壁掛けテレビ……と思い、あれ、と疑問が湧く。
私、最近テレビを見ていない気がする。リモコンに触れた覚えがない。

いつから見ていないんだろうと考えたけれど、思考は答えを見つけられないまま、霧の中にでも入り込んだようにぼやけていく。

「おい。そこに座れ」

岩倉さんの声にハッとする。

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