冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


江並さんと一緒に選んでいるうちに、なんだか少しだけ楽しくなってきて、気付けば薦められるまま二着の下着を購入していた。

もちろん派手だったり生地が極端に少なかったりしない、普段から使っていてもおかしくないものを選んだものの、これをつけて岩倉さんを誘う勇気は私にはない。

筧さんってすごいなと時間差で感心した。

数時間前に突然気付いた恋心。
でもそれは、追ってきた可能性に押しつぶされていた。

『まぁ、とりあえずは今まで通りでいいんじゃない? 先を急ぐ話でもないだろうし』

江並さんが何気なく言った言葉にハッとした。

この生活は、岩倉さんからしたら私の治療でしかないのだから、ずっとは続かない。
岩倉さんと私は恋人同士じゃないし、今、こうして同居していることがイレギュラーなのであって、別々に暮らすのが普通だ。

だから、遠くない未来、この生活は終わる。
そんな、すぐそこで待ち構えている未来に初めて気付いて……落ち込んでいた。

でも、今までがおかしかったんだ。

これまでの生活は全部が岩倉さんの厚意から成り立っていたものだ。
だから、それがなくなるんだと落ち込むんじゃなくて、それまでの岩倉さんに感謝すべきだ。

そう思い直し、顔を上げる。

そして、一度洗おうと手にしていた購入したばかりの下着に目を留めた。

今日は、岩倉さんはクライアントとの会食で遅くなると言っていた。そのため、私も夕飯は簡単に済ませて、今はこれからお風呂に入ろうとしていたところだ。

お店では試着したけれど、恥ずかしくてしっかり見られていない。
岩倉さんは不在……。

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