冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「私、好き、なんでしょうか」

うろたえて聞いた私に、江並さんは困った顔をしながらも「そうだと思う、かな?」と肯定した。

「あの、でも、岩く……相手の人は私のこと、ただの親切心で面倒見てくれているだけなのに勝手に好きになるとか、すごい迷惑でしかないっていうか……」

別に恋愛感情が汚いだとか低俗だと言いたいわけじゃない。
でも、すごく綺麗な親切心で接してくれている岩倉さんに対して抱くには、とても申し訳なく感じる。

岩倉さんに対する裏切りにも思えて眉を下げた私に、江並さんは眉を寄せ考えるようにうなった。

「んー、そもそも、相手の行動に隠されているのがただの慈愛なのか恋愛感情なのかってとこが重要よね。個人的には、体の関係がある以上、ある程度はそういう目で見てるんじゃないかとは思うけど。っていうか、私が見ている限り、だいぶあからさまに出穂さんを特別扱いしてるし」

ひとりでうんうんと考えていた江並さんが私を見る。

「まぁ、とりあえずは今まで通りでいいんじゃない? 先を急ぐ話でもないだろうし」
「先……」

江並さんの言葉に、ハッとする。

……先のことを考えるのは初めてだった。
当然、未来のことなんてわからないし、私には先見の明なんてものはない。

でも……ひとつだけ、私にもわかることがあった。

それに気付き言葉を失っている私に、江並さんが笑いかける。

「今日のところは、新しい下着で襲ってみれば? 胃袋を掴むのはもう逆にされてるっぽいし、体で掴むのもいいんじゃない? 相性ってあるし。それに、いつもと違う雰囲気に相手もドキッとするかもしれないし」

話しながら江並さんが「ほら、これとかは?」と薦めてくるので、ゆっくりと沈んでいく気持ちに気付かれないよう笑顔を作った。




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