冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「すみません。なんでかはわからないんですけど、岩倉さん、私のことが好きみたいなんです。佐鳥さんの言う通り、最初は信じられなかったですし、そんなわけないって何度も思ったんですけど、でもどうしてもそういうことらしくて」
自分で言いながら自惚れた発言だなと思い、苦笑いで続ける。
「私、何もあげられないから恋人にはなれないって言ったんです。そしたら、侮辱しているのかって怖い顔されました。見返り欲しさに愛を語ってるわけじゃないと……なんか、ちょっと違うかもしれませんが、岩倉さん、そんなようなことを言ってました」
おっかない顔をされたのが印象的すぎて、発言自体はしっかりとは覚えていないけれど、ニュアンス的にそうだった。
冷蔵庫から丸くくり抜いた生チョコを取り出し、粗熱の取れたクッキーに挟んでいく。
「私、失礼な発言をしたんだなと思いました。岩倉さんは恋とか愛とか、純粋に想いの話をしていたのに、私はそれを利害関係に当てはめようとして……同時に、岩倉さん自身を、利害関係を抜きにした関係を求めない人なんだと決めつけていたんだと気付きました」
視線を上げ、佐鳥さんに笑いかける。
「正直、私はこのまま一緒に居続けたら、いつかきっと佐鳥さんが危惧したような問題にぶつかると思います。だって、私がなにも持っていないのなんて、私が一番わかってますから。それなのに、釣り合わない自分に気付きながらも呑気に笑って胡坐をかいていられるほど能天気ではないつもりです。……ただ」
「ただ?」
佐鳥さんが先を促すので、出来上がったクッキーサンドを透明なラッピング袋に入れながら口を開く。