冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
とは言っても、この時期は専門店だって混み合っている。
岩倉さんはただでさえ忙しいのに、わざわざお店に寄って買ってきてくれたのかと思うと、それだけで満たされた気分だった。
岩倉さんが用意してくれた〝私のため〟は、どれも嬉しくて幸せでいっぱいになる。
「開けてみろ」と言われ、リボンを解く。
中に入っていたのは、色とりどりのマカロンだった。
「おまえが先輩に渡すのを止めておきながら、俺がこれを選ぶのはどうかと思い、手に取ったあとしばらく悩んだが……」と少し自嘲するような笑みを浮かべたあと、岩倉さんが私を見る。
「丸いものが好きなんだろ。似たようなものの交換になったな」
『あの、少し前、私が編みぐるみを可愛いって言ったら、岩倉さんが〝丸いしな〟みたいなことを言っていて、それから考えていたんですけど。私、丸い形のものが結構好きかもしれません』
『あ、えっと、風鈴とか気球とか、地球儀とか……あ、あと、どら焼きとか』
ずっと前に言った言葉を覚えていてくれた岩倉さんに目を見開く。
それから笑みをこぼし……箱の中のマカロンを見つめた。
「カラフルで可愛いですね。ずっと眺めていたいくらいです」
「食べろ。腐る」
そのあと、岩倉さんが入れてくれたコーヒーと一緒に、もらったマカロンを食べた。
見た目が可愛いだけじゃなく味もいいマカロンに、私は大満足のバレンタインだったのだけれど。
私の向かいに座った岩倉さんは、眉間にシワを寄せるのを我慢しながらチョコサンドを食べていて、申し訳ない思いと嬉しさが私の中で競り合っていた。
来年ももし渡せるのであれば渡したいけれど……それまでに、もっとビターなチョコがないか探しておこうとこっそり心に決めた。