冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「すごい量ですね……」

抱きかかえるほどの量のチョコなんて漫画の世界で、思わず笑ってしまう。
岩倉さんは「全部仕事関係だ」と興味なさそうに答えた。

「どこからもらったかは事務員に記録させているし、なにも気にせず好きに食べてくれていい。既製品以外は断ったから品質的には問題ない」

そうは言われても、メッセージカードが張り付いているものもあるし、全部が全部義理ではなさそうに思う。

私でも知っている高級ブランドのチョコもちらほら見える。
岩倉さん宛のものを私が食べてもいいのかな。罰があたらないだろうか。

「でも、メッセージカードも入ってますし、本命のつもりで岩倉さんに渡した人もいるんじゃないですか? それを私が食べるのは申し訳ないです」
「チョコを差し出された時点で、義理以外は受け取らないと言ってある。問題ない」

すがすがしいほどハッキリ言いきった岩倉さんが、今度は細長い箱を差し出してくる。
薄いピンク色の箱に白リボンがかかっているラッピングが可愛らしい。

「おまえが用意しているとは思わなかったから交換みたいになるが、俺からだ」

想像もしなかった言葉に、驚いて岩倉さんを見上げる。

バレンタインに、本命、義理以外にも友チョコや逆チョコといった種類があるのは知っていた。
けれど、まさか岩倉さんがこういうイベントに乗っかるとは思っていなかっただけにびっくりした。

「えっ……岩倉さん、あの戦場に自ら出向いたんですか?」
「おまえが言うのがバレンタインの特設会場だとしたら、これはそこで購入したものじゃない。専門店だ」
「専門店……なるほど、その手があったんですね」


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