冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「まぁまぁだな」
「前から思ってたんですけど、うちでいれるコーヒーとは香りが違いますよね。少し、麦茶っぽい香りがするというか」
「叔父の好みの豆を使ってるからな。俺の好みとは少し違う。……まぁ、でも、上出来だ」
伸びてきた手が、ポンと頭を撫でる。
そのまま少しの無言の時間が流れたあと、そっと口を開いた。
「岩倉さんは恋愛関係とか、隠しておきたい人かと思ってました」
仕事には響かないにしても、関係を公にしたらここの社長である、岩倉さんの叔父さんにだってバレて話題にされるかもしれない。
気安い社員に、からかわれるかもしれない。
佐鳥さんとのやり取りを見ている限り、岩倉さんはからかわれるのを嫌っていそうだ。
それに、さっきの本島さんとのやり取りなんていくらでも逃げようがあったし、あんな答え方しなくてもよかった。
岩倉さんだってわかっていただろうにどうしてわざわざ……と思っていると、岩倉さんが答える。
「否定はしない。でも、知らせておいた方がいい相手もいる。俺はずっと一緒にいられるわけでもないし、牽制の意味でもたまに見せつけた方がいいかもしれないと思っただけだ」
口の端をあげた岩倉さんが、私の髪を一束手ですくう。
よくわからないけれど、岩倉さんがそう言うならそれでいいかと思い、ドリッパーを洗うためにスポンジに洗剤をつけた。