冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「昔は、花嫁修業ってお茶だったって聞いたことあります。あと、お花とか」
「それが一般的だったかもしれないな。まぁ、俺に限ってはコーヒーの方が実用的だ」
朝も夜も、そしておそらく事務所でもコーヒーを好んで飲む岩倉さんに限っては、本当にそうだと思う。
私も、できるならおいしいコーヒーを入れてあげたいし……それに、岩倉さんと並びながら何かをする時間は好きなので、今後も指導してもらえれば、と思う。
でも。
「私は、結構好きだったりするんですけど。緑茶もほうじ茶も、ホッとする気がして。それに、おやつによって合う飲み物って変わりますし、そういうところに気を使えるのも贅沢な気がして好きです」
そう言ってから、ハッとする。
「あ、でも岩倉さんはそもそもおやつを食べないですもんね。すみません」
甘いものが好きな私と違って、岩倉さんは食後だろうとおやつの時間だろうと、いつもコーヒーだけだ。
なので、いらないことを言ってしまったなと思い謝ったのだけど、岩倉さんは「いや」と否定した。
「今日はもう帰れるのか?」
「はい。半過ぎには上がれそうです」
「俺ももうここで終わりだ。良さそうな店を調べておくから、帰りがけに寄って行こう」
「いいお店……?」
なんのお店なのかがわからずに聞くと、岩倉さんはスマホを操作しながら答える。