ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「……そうだったの。それにしても、あの冷徹男がそんな事を言えるなんて意外だわ。」
月菜さんから聞いたのは、《《あの》》柚瑠木さんが言ったとは思えないほどの甘いセリフの数々。それを思い出してうっとりとしてる月菜さんもなかなか凄いわ。
私がそんな事を言われたら、もしかして何か企んでいるのじゃないかしらと疑いたくなるもの。
「少しずつ本当の柚瑠木さんを見せてくれているんじゃないかと思うんです。いつもと別人みたいで、そんな柚瑠木さんに私の心臓がもたなくなりそうですけれど。」
そう言って恥ずかしそうにテレている月菜さんは可愛らしいけれど、どうしても無表情の柚瑠木さんと甘いセリフが結びつかないわ。ごめんなさいね、月菜さん。
でも今月菜さんが味わっているドキドキはよく分かるから……
「そうよねえ。それにしても柚瑠木さんが「僕に甘えて欲しい」だなんて……ふふふ、月菜さんはいったいどうするつもりなの?」
私も同じような事を聖壱さんに言われたことがあって、結構悩んだのよ。こんな性格だし、素直に甘えることなんて出来っこなかったから。
でも月菜さんは柚瑠木さんから言われればなんでも頑張ってしまうでしょうから。
「急に甘えろと言われても、私はどう甘えればいいのか分からなくて……」
どうやら彼女もあまり誰かに甘えるのが得意ではない様子。真面目な性格の月菜さんは甘える前に努力するタイプだったのでしょうね。
だけど月菜さんが甘えてくれないんじゃ柚瑠木さんも寂しいでしょうから、2人のためにちょっとだけアドバイスすることにした。
「難しく考える必要はないと思うわ。月菜さんが柚瑠木さんと一緒にしたい事や、2人で行きたい場所、何だっていいのよ。それか……《《また》》「ギュッとしてもいいですか」でも喜ぶと思うわよ?柚瑠木さんは。」
どうせなら車が欲しいとか、別荘が欲しいなんて言って柚瑠木さんを困らせてくれたら面白いんだけど。流石に月菜さんには無理でしょうし?
「同じように言えばいいんじゃない?あら、もうこんな時間ね。そろそろレジデンスに帰りましょうか?」
「……は、はい。頑張ります!」
柚瑠木さんへの文句を思いきりぶちまけるつもりだったのに、月菜さんのふんわりとした雰囲気に癒され言えなくなってしまったわね。
……本当に可愛い妻に感謝するのね、柚瑠木さん!