ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~


「それで……杏凛(あんり)さんはどうして匡介(きょうすけ)さんに甘えることが出来ないでいるの?」

 料理教室が終わると、私は月菜(つきな)さんと杏凛さんを引っ張って近くにある喫茶店へ。ちょっとだけ強引かもしれないけれど、こんな面白そうな話は聞かずにはいられないじゃない?
 メニューを注文しウエイトレスがキッチンへ入ると、すぐに杏凛さんに先程の話の続きを求めた。だってずっと気になって調理に集中出来なかったのだもの。 
 杏凛さんは私の強引さに少し戸惑いながらも、ゆっくりと彼女と匡介さんの事を話し始めてくれた。

「私と匡介さんは、契約で結ばれた夫婦なんです。追い詰められた私にそう提案してきたのも彼だったのですが……」

「契約結婚ですって!?」

 杏凛さんの言葉に私は驚いて大きな声を出してしまう。まさか私と月菜さん以外にも……それもこんな近くに契約結婚をしている夫婦がいたなんて。
 月菜さんを見ると彼女はさほど驚いていない、もしかしたら彼女は杏凛さん達が契約結婚だと知っていたのかもしれない。

「はい、私はきちんとそう割り切って判を押したつもりだったんです。ですが結婚後、匡介さんはそんな私を異常なほど過保護に甘やかすようになってしまって」

 あれは過保護という言葉で済むのかしら?料理教室で最後まで扉の向こうで立って待っていた匡介さんを思い出す。さすがに今日は付いて来ていなかったようだけれど……
 けれどそこまでするには匡介さんも何か理由があるような気がするの。それを杏凛さんは隠しているのではないかしら?

「それじゃあ、杏凛さんはそんな匡介さんのとる行動を迷惑だと感じているの?」

 言えない事を無理に聞くわけにはいかない。だから匡介さんのその行動について杏凛さんがどう思っているのか、その素直な気持ちを聞いてみることにしたの。


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