食リポで救える命があるそうです
・
・【ユイ】
・
目が覚めると、私はベッドの上で寝ていた。ホテルの一室みたいな場所。
いや私は道端で急に眠くなって、と思っていると、なんとあの迷子になっていた男の子が目の前にいた。
「君、パパは見つかったの……?」
「そうそう! パパがユイのことを介抱してくれたんだ!」
そうか、この男の子のパパが私を介抱して家へ連れてきてくれたわけだ。
じゃあリュートさんは、と思って、
「リュートさんはどこですか?」
と言った刹那、男の子はまるで鬼のように眉間にシワを寄せて、やけに低い声でこう言った。
「その名前を口にするな」
その声はまるで、私の耳元で『俺たちの組織に来てもらう』と言った男性の声にそっくりで、私は背筋が凍ってしまうと、男の子が声を震わせながら、こう言った。
「あんなヤツ、いなくなればいいんだ。俺たちのことをずっと邪魔し続けやがって、パーティが解散して表の世界から消えた時は心底嬉しかったモノだがなぁ」
えっ、ちょっと、どういうこと、何を言っているの? というか?
「何で私の名前が、ユイだと知っているの……?」
「それは……ずっと見ていたからだよぉっ!」
ニタァと悪魔のように笑うと、その男の子はみるみるうちに大きくなっていき、あの時の、ガタイの良い男性の姿になった。
「ユイ! 俺と結婚しよう! 俺のほうが絶対オマエを幸せにしてやれる!」
私はあまりの恐怖に腰が抜けてしまい、ベッドの上で動けなくなっていると、
「そうかそうか、もうベッドインしてもいいということか。話が早くて助かるなぁ。俺は眠った相手を襲う趣味は無いから、そうやって起きてくれていると有り難いぞ」
「い、いやぁ……」
私はすぐさま手に力を込めて、光の玉を精製し、男性に放った。
リュートさんのようなホーミング能力は無いけども、しっかり男性にヒットした、が、男性は一切気絶する気配は無く、
「ハハハハ! その程度の魔法で俺は止まらないぞぉぉおお!」
そう言って私に飛びかかって来たその時だった。
目の前に拳が飛んできたと思ったら、その腕の持ち主はリュートさんで、その男性のアゴをパンチでクリーンヒットし、その男性を壁まで飛ばした。
「俺のユイに手を出すな」
攻撃を喰らってピクピクしているその男性に、リュートさんは、
「決めた。オマエは簡単に気絶させない。ボコボコにして門番に突き出してやる」
リュートさんは体中に風を纏わせ、自動車よりも早い速度で移動し、その男性に殴る蹴るのコンビネーションで一気に連撃を加えた。
さすがにやりすぎだと思って、私は叫んだ。
「もうやめて! もういいから! 何かリュートさんらしくない!」
私の声ですぐ止めたリュートさんは私のほうを振り返り、
「でもコイツは……」
「もう大丈夫だから、それより私は怖いリュートさんを見たくない」
「分かった、今、俺のことは見ないでほしい」
と言いながらリュートさんはゆっくりと歩み寄ってきて、私が座っていたベッドの上にあがり、ヒザで立ち、リュートさんは胸元を私の顔に当てて、優しく抱き締めた。
それがすごく暖かくて、凍るように動かなくなっていた体も柔らかくなっていくようだった。
「ゴメン、ユイ。もうこんなことはしないから」
ちょっとだけ私から離れて、手から光の玉を出して、最後に気絶させる魔法を使って終わらせたリュートさん。
私とリュートさんは、その男性の身柄を門番に引き渡した。
どうやらあの迷子たちこそが私たちを引っかける罠だったらしい。
そもそも前にリホウへ来た時に、私たちが迷子を助けたところを見られていたかもしれないという結論になった。
あの最初にリホウへ来た時の百貨店の迷子自体は本物だったかもしれないが、その助ける様子を見て利用された、と。
私とリュートさんは一旦、リュートさんの家へ戻ることにした。
リホウのお偉いさんたちは「また来て、是非その時にいろいろ教えて下さると有り難いです」と言ってくれた。
本当はそのままリホウでサツマイモやハンバーグの話をできれば良かったんだけども、今は疲れてそれどころじゃなかった。
家へ戻ってきて、リュートさんが、
「ユイ、話したいことがある」
真剣そうな瞳でそう言ったリュートさん。
一体何なんだろうと思っていると、リュートさんがその場で私に向かってひざまずいてこう言った。
「この世には誓いの魔法という上級魔法がある。この世で、世界で一人にしか掛けられない魔法だ」
「誓いの魔法……それってどういった魔法なんですか?」
「その魔法を掛けると、その誓いの魔法を掛けた相手と掛けられた相手は、一生お互いのいる場所にすぐワープができるという魔法だ。その魔法があれば、俺はすぐにユイの元へ助けに行くことができる」
「それいいですね! 今回は間に合いましたけども、それさえあればもう間に合う・間に合わないの話じゃなくなるんですね!」
嬉しそうに喋った私とは反比例するかのように、明らかに厳かな雰囲気を出しているリュートさん。
一体どうしたんだろうと思っていると、
「いや、やっぱりちゃんと言わないとダメだな。これは一生のパートナーになる人間としかしてはいけない魔法なんだ。つまり、この魔法を使うとユイ、俺とは恋人になってもらうことになるんだ」
「あっ、そうなりますね。世界で一人にしか掛けられないで、すぐお互いの場所にいけるなんてそれしかありえないですね」
「俺はユイの恋人になりたい。というか好きだ。俺と一生一緒にいてほしい。それとも、この想いはユイにとっては迷惑か……?」
不安そうに顔を見上げたリュートさん。
いやいや
「普通に私もリュートさんこと好きですよ! というか私を一生のパートナーにして逆にいいんですかっ!」
「えぇぇっ? 良いに決まっているだろ! 何言ってるんだよ!」
「いやすごいツッコミみたいなテンションで言いましたね、いやでも私」
そう言いながら私はリュートさんの腕を引っ張って、立たせ、抱きつき、
「リュートさん! 私に誓いの魔法掛けて下さい!」
「分かった。ありがとう」
そうリュートさんが言うと、私はポカポカする、まるで日向ぼっこしているような温かさを感じた。
私もリュートさんも金色のオーラを纏っている。
もう金婚式ってことなのかな、とか思っていると、そのオーラは優しく体に溶け込むように消えていき、
「ユイ、もう誓いの魔法掛けたから。キャンセルとかないからな」
「こっちの台詞ですよ、本当に私でいいんですね」
「ユイしかいないだろ、俺には」
「私もリュートさんしかいないですから」
私はリュートさんと恋人になれた。
それはとても幸せなことだと思う。
さて、
「やっぱりあの悪い組織を壊滅させるしかないですね、そうすれば飢餓が無くなるかもしれません!」
「まあどっちにしろ邪魔なヤツらだからな、壊滅させるに越したことは無さそうだ」
でもまあとりあえず、今日はもう休むことにした。
私とリュートさんの旅はまた始まるだろうけども、きっと大丈夫だ。
何故ならリュートさんがすぐ傍にいてくれるから。
(了)
・【ユイ】
・
目が覚めると、私はベッドの上で寝ていた。ホテルの一室みたいな場所。
いや私は道端で急に眠くなって、と思っていると、なんとあの迷子になっていた男の子が目の前にいた。
「君、パパは見つかったの……?」
「そうそう! パパがユイのことを介抱してくれたんだ!」
そうか、この男の子のパパが私を介抱して家へ連れてきてくれたわけだ。
じゃあリュートさんは、と思って、
「リュートさんはどこですか?」
と言った刹那、男の子はまるで鬼のように眉間にシワを寄せて、やけに低い声でこう言った。
「その名前を口にするな」
その声はまるで、私の耳元で『俺たちの組織に来てもらう』と言った男性の声にそっくりで、私は背筋が凍ってしまうと、男の子が声を震わせながら、こう言った。
「あんなヤツ、いなくなればいいんだ。俺たちのことをずっと邪魔し続けやがって、パーティが解散して表の世界から消えた時は心底嬉しかったモノだがなぁ」
えっ、ちょっと、どういうこと、何を言っているの? というか?
「何で私の名前が、ユイだと知っているの……?」
「それは……ずっと見ていたからだよぉっ!」
ニタァと悪魔のように笑うと、その男の子はみるみるうちに大きくなっていき、あの時の、ガタイの良い男性の姿になった。
「ユイ! 俺と結婚しよう! 俺のほうが絶対オマエを幸せにしてやれる!」
私はあまりの恐怖に腰が抜けてしまい、ベッドの上で動けなくなっていると、
「そうかそうか、もうベッドインしてもいいということか。話が早くて助かるなぁ。俺は眠った相手を襲う趣味は無いから、そうやって起きてくれていると有り難いぞ」
「い、いやぁ……」
私はすぐさま手に力を込めて、光の玉を精製し、男性に放った。
リュートさんのようなホーミング能力は無いけども、しっかり男性にヒットした、が、男性は一切気絶する気配は無く、
「ハハハハ! その程度の魔法で俺は止まらないぞぉぉおお!」
そう言って私に飛びかかって来たその時だった。
目の前に拳が飛んできたと思ったら、その腕の持ち主はリュートさんで、その男性のアゴをパンチでクリーンヒットし、その男性を壁まで飛ばした。
「俺のユイに手を出すな」
攻撃を喰らってピクピクしているその男性に、リュートさんは、
「決めた。オマエは簡単に気絶させない。ボコボコにして門番に突き出してやる」
リュートさんは体中に風を纏わせ、自動車よりも早い速度で移動し、その男性に殴る蹴るのコンビネーションで一気に連撃を加えた。
さすがにやりすぎだと思って、私は叫んだ。
「もうやめて! もういいから! 何かリュートさんらしくない!」
私の声ですぐ止めたリュートさんは私のほうを振り返り、
「でもコイツは……」
「もう大丈夫だから、それより私は怖いリュートさんを見たくない」
「分かった、今、俺のことは見ないでほしい」
と言いながらリュートさんはゆっくりと歩み寄ってきて、私が座っていたベッドの上にあがり、ヒザで立ち、リュートさんは胸元を私の顔に当てて、優しく抱き締めた。
それがすごく暖かくて、凍るように動かなくなっていた体も柔らかくなっていくようだった。
「ゴメン、ユイ。もうこんなことはしないから」
ちょっとだけ私から離れて、手から光の玉を出して、最後に気絶させる魔法を使って終わらせたリュートさん。
私とリュートさんは、その男性の身柄を門番に引き渡した。
どうやらあの迷子たちこそが私たちを引っかける罠だったらしい。
そもそも前にリホウへ来た時に、私たちが迷子を助けたところを見られていたかもしれないという結論になった。
あの最初にリホウへ来た時の百貨店の迷子自体は本物だったかもしれないが、その助ける様子を見て利用された、と。
私とリュートさんは一旦、リュートさんの家へ戻ることにした。
リホウのお偉いさんたちは「また来て、是非その時にいろいろ教えて下さると有り難いです」と言ってくれた。
本当はそのままリホウでサツマイモやハンバーグの話をできれば良かったんだけども、今は疲れてそれどころじゃなかった。
家へ戻ってきて、リュートさんが、
「ユイ、話したいことがある」
真剣そうな瞳でそう言ったリュートさん。
一体何なんだろうと思っていると、リュートさんがその場で私に向かってひざまずいてこう言った。
「この世には誓いの魔法という上級魔法がある。この世で、世界で一人にしか掛けられない魔法だ」
「誓いの魔法……それってどういった魔法なんですか?」
「その魔法を掛けると、その誓いの魔法を掛けた相手と掛けられた相手は、一生お互いのいる場所にすぐワープができるという魔法だ。その魔法があれば、俺はすぐにユイの元へ助けに行くことができる」
「それいいですね! 今回は間に合いましたけども、それさえあればもう間に合う・間に合わないの話じゃなくなるんですね!」
嬉しそうに喋った私とは反比例するかのように、明らかに厳かな雰囲気を出しているリュートさん。
一体どうしたんだろうと思っていると、
「いや、やっぱりちゃんと言わないとダメだな。これは一生のパートナーになる人間としかしてはいけない魔法なんだ。つまり、この魔法を使うとユイ、俺とは恋人になってもらうことになるんだ」
「あっ、そうなりますね。世界で一人にしか掛けられないで、すぐお互いの場所にいけるなんてそれしかありえないですね」
「俺はユイの恋人になりたい。というか好きだ。俺と一生一緒にいてほしい。それとも、この想いはユイにとっては迷惑か……?」
不安そうに顔を見上げたリュートさん。
いやいや
「普通に私もリュートさんこと好きですよ! というか私を一生のパートナーにして逆にいいんですかっ!」
「えぇぇっ? 良いに決まっているだろ! 何言ってるんだよ!」
「いやすごいツッコミみたいなテンションで言いましたね、いやでも私」
そう言いながら私はリュートさんの腕を引っ張って、立たせ、抱きつき、
「リュートさん! 私に誓いの魔法掛けて下さい!」
「分かった。ありがとう」
そうリュートさんが言うと、私はポカポカする、まるで日向ぼっこしているような温かさを感じた。
私もリュートさんも金色のオーラを纏っている。
もう金婚式ってことなのかな、とか思っていると、そのオーラは優しく体に溶け込むように消えていき、
「ユイ、もう誓いの魔法掛けたから。キャンセルとかないからな」
「こっちの台詞ですよ、本当に私でいいんですね」
「ユイしかいないだろ、俺には」
「私もリュートさんしかいないですから」
私はリュートさんと恋人になれた。
それはとても幸せなことだと思う。
さて、
「やっぱりあの悪い組織を壊滅させるしかないですね、そうすれば飢餓が無くなるかもしれません!」
「まあどっちにしろ邪魔なヤツらだからな、壊滅させるに越したことは無さそうだ」
でもまあとりあえず、今日はもう休むことにした。
私とリュートさんの旅はまた始まるだろうけども、きっと大丈夫だ。
何故ならリュートさんがすぐ傍にいてくれるから。
(了)