飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 騒がしかった屋敷の中が静まって、ぼんやりと窓の外を見つめていたけれどあの人は来なかった。あの日はやっぱり私の事を面白半分に見に来ただけだったのかもしれない。
 早々に諦めてベッドにでも潜り込もうとすると「コンッ」と窓に何かが当たった音がした。
 急いでカーテンの隙間から窓の外をのぞくと、そこに人影がある。私は窓を開いて狭いベランダへと出ると、柵に手をかけ庭にいる人物を見下ろした。

「俺を待っていたか、千夏(ちなつ)

 自信に溢れた声、この強気な態度……二階堂(にかいどう)の屋敷の奥まで堂々と入って来てしまう大胆不敵な性格。間違いなく彼だ。

「別に待ってないわ、この家の警備に捕まってないかと心配しただけ」

 この人がどうやってここに来ているのか分からないけど、とてもまともな方法で入って来てるとは思えない。父は余程信頼できる人間か大切な取引相手くらいしかこの家に連れてきたりしない。
 こんな若い男性をあの父が屋敷に呼ぶとは思えないの。

「千夏は心配性なんだな、俺はこう見えても運動神経に自信があるんだけど。それより、今日こそ降りてこないか? 今なら誰にもバレやしない」

 自信ありげに彼は言うけれど、そんなこと出来るはずない。私がこの部屋から出たことが他の人にバレれば、この人だってただでは済まされないというのに。

「無理よ、前にも言ったでしょ? 私にはこの部屋から出れない理由が……」

「駄目じゃない、無理でもない! 千夏はそこから……その場所から早く自由になりたいとは思わないのか?」


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