飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
彼の言葉に私は戸惑った、自由になりたいなんてそんな事ずっと前に諦めてしまってる。同じように私を説得しようとする柚瑠木兄さんにだって無理なのだと繰り返して……
それなのに、この人の力強い言葉に胸が揺さぶられるような気がする。まるで本当にこの屋敷に縛られた私を自由にしてくれるような、そんな気持ちにさせられるの。
「貴方の気持ちは嬉しいわ、だけどね……私はそんな事をしてもらえるような人間じゃないの!」
この家での私の呼び名は「お荷物」「恥晒し」それに「財産目当て」というもの。本当の名前で呼ばれる事など滅多に無い。
そんな私は何かしてもらっても、返せるものが何もない。
「そんなことは無い、千夏はこの二階堂の屋敷に隠されている深窓の令嬢だと周りでは言われてるんだ。お前が知らないだけで、興味を持っている男はたくさんいる」
違うわ、私はそんな貴方が思っているような深窓のお嬢様なんかじゃないの。そんな綺麗な存在なんかじゃなくて……
『この屋敷に入り込んだ、卑しい女の血をひいた汚らしい娘が!』
初めて投げられた言葉を思い出し、頭がズクズクと痛む。あの人の言葉一つで私の価値はそれだけになってしまった。この屋敷ではそれが当たり前なのに……
「私の事を何も知らないのよ、貴方もその他の人も。だから……ここから降りたりなんてできない」
「千夏が思っているよりも、俺はお前の事を知っている自信がある。だが……今日は諦めてやる、また来週ここに来るから」
時計を確認して、彼はそう言うと前と同じように走って去って行ってしまった。私の返事など聞きもしないで……