飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「ちょっと、櫂さん! 離さないで下さいね、絶対離しちゃダメですよ」
そう言って必死に手綱を握って震える私を櫂さんは今にも吹き出しそうな顔で見ている。だってまさか馬に乗ることがこんなに難しいとは思わなかったもの。ゆらゆらと揺れる馬の背中は想像していたのよりずっと不安定で怖いし、これが動物の背中だと思うとドキドキもする。
「大丈夫だよ千夏、ちゃんとインストラクターが馬に指示を出してくれる。もっと力を抜いて楽しんでみるといい」
そう簡単に言わないで、私は今までまともに動物と触れ合った事もないのに。緊張からかガチガチの身体のまま私は海岸へと連れて行かれる。
九十九里浜の波の音を聞きながらの乗馬に少しずつ慣れてきた頃、櫂さんがスマホを持ってこっちを向いていた事に気付く。
「櫂さん、もしかして写真を撮ってたんですか?」
こんなみっともない顔をしてブルブル震えている状態を撮られていたなんて恥ずかしい。怒ってカメラを取り上げたいが馬の上なのでそうする事も出来ない。
「消してください! でなきゃ櫂さんの恥ずかしい写真を私も撮りますよ⁉」
そう言ったはいいが、櫂さんはいつも素敵でそんな恥ずかしい写真なんて撮れそうにないのだけど。
結局、九十九里浜をバックに馬に乗った私と櫂さんが並んで写真を撮ってもらい初めての乗馬体験は終わった。