飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「念のため少し離れた場所の料亭を予約しています、千夏はそれでもいいですか?」
柚瑠木兄さんはとても慎重な性格だということを私もよく知っている。冷静沈着でとても頼りになる人だから、私はそれで構わないと頷いて見せた。
持ってきた鞄にはあの大量のコピー用紙が入っている、これを見た柚瑠木兄さんが父や櫂さんについて何というかとても不安だった。
車で一時間程高速を走ると、街並みはガラッと変わってくる。大きなビルは少なくなり、代わりに一軒家が増えてきた。
高速を降りると、十分ほど走って見つけたパーキングへと車を停めた。
「この近くなので、歩きでも大丈夫ですよね?」
柚瑠木兄さんはそれだけ言うとさっさと歩きだしてしまうが、いつもの事なので気にしない。私は彼の後を早足で追いかけていく。
細い道を進めば落ち着いた雰囲気の料亭が見えてきた。暖簾をくぐれば女将らしき女性がすぐに挨拶をして奥の個室へと案内してくれる。
「食事をしながら話をしましょう。僕もお腹が空きましたから」
予約した時にコースも決めていたそうで、私と柚瑠木兄さんの席の前には次々と料理が並べられていく。先にすべてを並べてもらっていた方が話をしやすいから、という所が時間を無駄にしたがらない柚瑠木兄さんらしいと思った。