飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「それで、柚瑠木(ゆるぎ)兄さんの方はどうなの? 私は(かい)さんの手帳をコピーしてきたわ、後で確認して欲しいの」

 今は食事が置かれているため、コピー用紙を出すわけにはいかない。先に柚瑠木兄さんの話を聞こうとそう言うと、彼は小さく頷いて一度箸をおいた。

「まず前に話した千夏(ちなつ)の父、(はぎ)さんの事です。彼が関わる二階堂(にかいどう)の企業におかしな金の動きがある事は話しましたよね、あれはやはり萩さんの仕業に間違いないようです」

「父が、本当にそうなの……?」

 ある程度覚悟はしていたつもりだったのに、こうしてハッキリ聞かされるとやはりショックが大きい。娘の父としては最低だったけれど、仕事に対する父の前向きな姿勢は尊敬してたのに。
 それに、もしそんなことが父の兄である二階堂 (あき)さんに知られたらどうなるか……

「この事を、柚瑠木兄さんのお父様はもう知って……?」

「ええ、父はずいぶん前から萩さんの動向をチェックしていたようです。僕が気付いたのは最近ですが、きっと父は萩さんの兄として複雑な気持ちなのだと思います」

 柚瑠木兄さんのお父さんは仕事には厳しいが、家族思いの優しい人だと知っている。きっと父の事で胸を痛めてて、それでも二階堂をまとめる立場として放ってはおけない。
 そんな辛い状況なのだと想像して胸が痛くなった。


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