飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
下手に出るべきか悩む。あの二階堂の屋敷を出て新河 千夏という一人の人間として再スタートを切った私には、もう異母姉の言う通りにはしたくなかった。
席から立ち上がったまま黙っていると、そんな私の様子をみて機嫌が直ったのか百々菜が口の端を上げて満足そうに微笑む。
……負けたくない、この異母姉にだけは。
「そうですか、それならもう用はなくなったということですよね? 私はこれで失礼させてもらいます、夫に心配かけるわけにはいかないので」
私のその言葉に百々菜の肩眉がピクンと跳ね上がった、きっとこれ見よがしに「夫」という単語を使ったのが気に障ったのだろう。
妹に嫌味を言われて黙っていられるような姉じゃない、すぐに余裕の表情を浮かべ私を見下したような視線を送ってきた。
「……新河さんが心配? ふふ、それは本当かしらね。利用するためだけに妻にしたアンタのご機嫌取りのつもりなのかしら、彼も大変ね」
「それは、どういう事ですか……?」
やはり異母姉は櫂さんと父の事について何かを知っている、それを匂わせ私にショックを受けさせるためにここに呼び出したのだと確信した。
「利用」「ご機嫌取り」その言葉が私の胸の奥に刺さる、本当にそうなのだとしたらどうしよう。