飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「だから、私がそれを知りたいのよ。一輝さんが何を考えているのか分からないんだもの」
いや、そう言われても。高宮さんを噂だけでしか知らない私にはないが何だか理解出来ない状態で、梓乃も戸惑っているのだろうけどきちんと話してもらわなくては。
ここだって高宮さんの行きつけのお店のようだし、わざわざ私を連れてきたのには意味があるのかもしれない。
「もっと詳しく聞かせてくれる? それだけの情報じゃ、私も何とも言えないわ」
私が梓乃に話の続きを聞かせて欲しいと言えば、彼女は少し迷った表情を見せた後ゆっくりと口を開いた。言い難いというより少し照れくさい、という顔をして。
「一輝さんは変なんだと思う。契約結婚という形で納得したはずなのに、私を理由もなく誘ってデートみたいな事をしたがるの。美味しいお店や展望台、それに……ほかにもいろいろ連れて行ってくれて」
「この店もその中の一つと言うわけね?」
梓乃は小さく頷いて見せる、もしかしたらここのお店が一番彼女が連れて来られた場所の中で印象に残っているのかもしれない。
「その、一輝さんは私が食べるのを見ていつも微笑んでいるの。大食いの私に呆れもせず、自分用のデザートも私が食べたいものばかり選んでくれて……」
ええと、それは惚気というのでは? つまり高宮さんは契約結婚するはずの梓乃を特別扱いして甘やかしている、そういう風にしか聞こえない。
まさかそんな話を聞かせれるとは思ってなくて、ほんのり甘酸っぱい気持ちになり口元がにやけそうになった。