飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「それで何か困る事でもあるの? いいんじゃないの、高宮さんは梓乃の事を大事にしてくれそうな方みたいだし」
梓乃の話を聞き素直に思った事を言えば、彼女は顔を真っ赤にして首を振る。そういう事を言いたいんじゃないと言わんばかりに。その様子も初々しい感じがして、すました顔をし続けるのに苦労した。
「私たちは契約結婚なのよ? 大事にされる理由なんてない、そんな風に優しくされてもどう返せばいいのか分からなくなるの」
「契約結婚だから優しくしちゃいけないなんて誰が決めたの? 梓乃がそれを嬉しいと感じたのなら、同じように貴女が高宮さんの喜ぶことをしてあげればいい。それだけじゃない?」
私は櫂さんに優しくされた分だけ、感謝の気持ちと彼に出来る事をやってあげたい。契約結婚だと分かっていても、もう私にとって櫂さんはただの契約相手ではないのだから。
もし……そう遠くない未来にそれで辛い思いをすることになっても、今の気持ちに素直でいたいから。
「……期待して、それが裏切られたら辛いじゃない。契約結婚を言い出したのは私なのに、中途半端な態度を取るなんて出来ないわ」
そう言って静かに俯く梓乃に、彼女にも私の知らない何かを抱えていることは分かった。二階堂の家ではいつも自分の事で精一杯で、梓乃の事にまでは気が回らなかったから。
「じゃあそう言えばいいんじゃない、高宮さんに。それともそう出来ない理由でもあるの?」
……分かって聞いている。梓乃にはそう出来ないんじゃない、そうしたくないんだって。