飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「お粥を作ってみたんだが、食べてみないか? 千夏(ちなつ)、君は昨日の夜から何も胃に入れてないだろう」
「……ごめんなさい、まだ食欲がなくて」

 昨日帰ってきて夕食を作り始めた辺りから、急に強い吐き気に襲われて今もベッドから出ることが出来ないでいる。私の様子を心配した(かい)さんが、こうやって何度も見に来てくれるけれど一向に具合は良くならなくて。やるべき家事も出来ず、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
 櫂さんは胃に優しいうどんやお粥、リンゴの擦りおろし等を持ってきてくれたけれど口に出来るのは飲み物だけ。そんな状況が、余計に私を精神的に追い詰めていく。

「謝らなくていい。ただ、心配事や不安に感じてることがあるなら俺に話してくれないか? こうして一緒に暮らしているのに、千夏の力になれないんじゃ意味が無いんだ」
「櫂さん、私……」

 素直に全部言ってしまえば楽になれるかもしれない。櫂さんが何を考えて二階堂(にかいどう)の家と繋がりを持ち、父の会社の経営状況を細かく調べているのか。私と契約結婚した本当の目的は何なのですか、と。
 でもそんな事をすれば五年の契約期間を待たずに、私たちの関係が終わってしまう気がして。今さら、この人と離れて私は一人で生きていけるのだろうか? そんな他力本願な本音も隠し持っていて、それを櫂さんに知られるのも凄く怖かった。


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