飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「お父様に呼ばれてきました、お邪魔してもよろしいでしょうか?」
「……どうぞ、萩様は書斎でお待ちです」
ツンとした顔で愛想笑いもせず、使用人の女性はそれだけを言うとさっさといなくなってしまう。他の相手ならその部屋まで案内するのが当然なのに、今も私はこの二階堂屋敷では使用人以下の存在らしい。
櫂さんが一緒なら、きっととんでもなく怒っていたかもしれないから黙って来て良かったと思う。
「千夏です、失礼してもよろしいでしょうか」
「さっさと入れ、他の人間に見られたらどうする」
だったら、この屋敷に私を呼ばなければいいと思うのだけど。私だって来たくて来てるわけじゃない、体調も良くないので余計にイライラする。
そんな感情を抑えつけながら、この家で教えられたように部屋の中に入ると深く頭を下げた。
「千夏、お前は随分と新河の若造に気に入られているようだな」
「そうでしょうか? 揶揄いがいのある妻だと、面白がっておられるのかもしれませんね」
そう返すと、その答えも気に入らなかったようで父は眉間にしわを寄せた。きっと「気に入られてます」と言っても、不機嫌になるのだろうけど。
自分と本妻の子が気に入られなかったからって、私にあたるのは止めて欲しいわね。姉の百々菜なんてどう考えても、あの我儘な性格が気に入られない原因に決まっているのだし。